購買データの分析でヒット商品のさらなる価値向上を実現

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有限会社タケシゲ

(右)代表 住田友香子 氏、(左)取締役 住田良幸 氏

有限会社タケシゲ(以下、タケシゲ醤油)は、福岡県福岡市にある醤油屋。そのルーツをたどると、創業はなんと1752年という、250年以上の歴史を持つ老舗です。

同社はもともと、食品関連の会社や飲食店に向けた業務用商品の製造・販売が中心でしたが、ある出来事をきっかけに、水産加工会社向けに卸していた「博多ニワカそうす」という調味液を一般消費者にも販売したところ、記録的な売上を達成することができました。

しかしタケシゲ醤油は、それに甘んじることなく、より高い顧客満足を実現するために、さらなる価値の提供を模索。そしてCCCマーケティングのデータ分析をもとにターゲットを明確化した「博多ニワカそうす」のレシピ本を制作し、全国の蔦屋書店の料理本売場で商品とともにプロモーション展開するなど、より一層の「博多ニワカそうす」の販売強化を目指し、販売数は3倍に拡大

そこで、ヒット商品「博多ニワカそうす」の誕生秘話と今回の施策について、タケシゲ醤油の代表・住田友香子氏(以下、友香子氏)と、夫で取締役の住田良幸氏(以下、良幸氏)にお話を伺いました。
目的 ヒット商品「博多ニワカそうす」の、既存購買者の把握と、ターゲットに合わせた施策実施による新規顧客の開拓
効果 「製品売上が3倍にUP」
施策 購買・行動をもとにした『生活ライフスタイルデータ』の分析によって得られた結果をもとにペルソナを作成。さらに、その人物像の価値観に沿ったレシピ本の制作と蔦屋書店内での販売・平台展開の実施

「知られざる調味液」が大ヒット商品になるまで

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タケシゲ醤油のルーツは古く、創業は250年以上前の1752年にまでさかのぼります。同社はこれまで、主に食品加工会社や料理店向けに、業務用醤油の製造・販売を手がけていましたが、その方針を変えることになったきっかけが「博多ニワカそうす」という商品の誕生でした。

「『博多ニワカそうす』は、もともとは『タレ』という、水産加工会社などが魚の加工用に使う業務用の調味液で、一般向けには販売していませんでした。ところが10年ほど前、ある一般のお客さまが『タレ』をお求めに来られたことがありました。なぜこの商品をご存知なのか、不思議に思って尋ねたところ、その方は私たちが『タレ』を卸していた水産加工会社の方で、以前から会社にある『タレ』を分けてもらい、自宅での料理に使っていたのだそうです。

ところが、その会社が営業をやめることになり『タレ』が手に入らなくなってしまった。これでは料理ができないというので、お求めに来られたというのです」
その後も『タレ』を求めるお客さまは何人も続き、興味を持った友香子氏は、お客さまのおすすめのレシピである生姜焼きをつくってみました。

「半信半疑だったのですが、これが衝撃的な美味しさで(笑)、この感動をもっと多くのお客さまに届けたいと思い、一般家庭向けに『博多ニワカそうす』と命名して販売を開始しました」
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すると、口コミや友香子氏のブログ、チラシ配布などの情報発信によって「博多ニワカそうす」のファンは順調に増加。

「ちょうどその頃、近所にオープンした『六本松 蔦屋書店』とご縁があって、『博多ニワカそうす』をイベント販売する機会をいただきました。さらにそれをきっかけに、その後も週に一度のペースで催事もさせていただくことになりました」

住田ご夫妻が毎週、試食販売などのデモンストレーションを重ねていくうちにリピーターも増え、販売量も拡大。そしてついに1年間で3,500本も売り上げるまでとなり、「博多ニワカそうす」は六本松 蔦屋書店の大ヒット商品に成長しました。

そのような忙しい日々のなか、住田ご夫妻と「博多ニワカそうす」に転機が訪れます。

「お客さまから『博多ニワカそうすで助けられた』と声をかけられるようになったのです。“助けられた”という意味を考えているうちに、もしかしたら『博多ニワカそうす』の製品価値には、それまで考えていた簡単さや美味しさだけではなく、もっとお客さまの役に立っていることがあるのではないかと思い始めました」

そこで友香子氏は、CCCマーケティングに対し、「博多ニワカそうす」についてユーザーが感じている価値を調べる方法はないか相談しました。友香子氏は、この経緯についてこう話します。

「六本松 蔦屋書店さんで販売に立っていたときに感じたのですが、このお店では置かれている商品がすべて、セレクトのされ方から陳列方法まで、一つひとつお客さまの目線でつくられている。本当にすごい会社だと思うと同時に、これほどのことができるのだから、自分たちが気づいていない『博多ニワカそうす』の価値を見つけてくれるのではないかと思ったのです」

顧客層とニーズの理解、そして新たな商品価値の創造へ

この話を受けてCCCマーケティングは、「博多ニワカそうす」購入者について、性別・年齢などの基礎データの分析を実施しました。その結果「博多ニワカそうす」購入者は50%以上が35~59歳の女性であることが判明。そこで今度は趣味・志向の現れやすい雑誌・書籍の購買データも分析することに。一般のT会員と比べて、「博多ニワカそうす」を購入した35~49歳が購入した、特徴のある書籍や雑誌のタイトルをリスト化していきました。
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すると、そこから見えてきたのは、「手間をかけずにつくれる料理を特集した雑誌」「小学生向けのドリルや勉強法の本」の購入者が多いということ。

そこから、CCCマーケティングでは、「博多ニワカそうす」の購買層は、料理では楽をしたい、あまり時間をかけずにおいしいものをつくりたいと考えている一方、子どもの教育にはしっかりと取り組みたいと考えている、料理や教育に対する興味が高い層であるという分析結果を導き出したのです。

この結果を受け、タケシゲ醤油で取締役を務める良幸氏は次のように話しました。

「いつも自分たちがお客さまと接するなかで、肌感覚ではわかっていたことを、はっきりとしたデータで見ることができました。これは、確信を持って次の取り組みに進むきっかけになりました」

また友香子氏は、「博多ニワカそうす」のさらなる価値がわかったとして、次のように続けました。

「『博多ニワカそうす』を使うことで、今まで30分かかっていた料理が10分で済んだとします。すると20分が浮きますが、この20分を使ってもう一品を追加してみたり、盛り付けや食器にこだわってみたりと、この20分はお料理を作る方のゆとりになります。そして、それは結果的に、お料理を召し上がるご家族への愛情にもつながる。この“ゆとり”や“愛情”を実現するのが、『博多ニワカそうす』の“美味しい”“簡単”だけではない、さらに進んだ価値だと気がついたのです」

CCCマーケティングでは、データの分析結果をもとに、「福岡県在住の44歳の女性。小学生の子供がいて、兼業主婦。仕事と家事に忙しい毎日を送っている。料理では楽をしたいが、子供の体に悪いものは避けながら、簡単でおいしくて栄養満点の料理ができれば理想。一方、子供の学力向上には手間暇をかけてあげたいと考えている」とペルソナを設定しました。
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顧客ニーズを反映したレシピ本制作を実施

そして、次にタケシゲ醤油とCCCマーケティングが取り組んだのは、設定したペルソナに向け、「博多ニワカそうす」を使えば、短時間で愛情のあるおいしい料理がつくれるということを伝えること。検討を重ねた結果、住田ご夫妻が選択したのはレシピ本の制作でした。その理由について、友香子氏はこう話します。

「実は以前にもレシピ本を出版したことがあったのですが、その時は『塗るだけで簡単・便利』という点を訴求していました。ですが、データ分析の結果を受け、お客さまの『博多ニカそうすがあって助かった』という言葉の意味は『おいしい料理を短時間でつくれて助かった』という意味だとわかりました

そこで、どれだけ短時間で料理をつくれるかを訴求するためには、数字を出すのが一番強いと考えたのです。たとえば『5分あれば煮魚ができる、10分ならこんな料理もつくれる』ということを見せるのは、わかりやすく、インパクトもあります。そうすることで、『博多ニワカそうす』があれば時短料理が実現でき、その結果、家族にも自分にも余裕ができることをしっかり理解してもらえる。この肝心の数字を伝えるためには、レシピ本が一番有効だろうと判断したのです」

そして、レシピ本『「ニワカそうす」の愛情ごはん』の制作に着手。今回は「簡単に料理がつくれる」ということよりも、「時短料理で実現できる理想のライフスタイル」を表現していくことで、よりターゲットに寄り添うことを意識した制作となりました。そしてここでも活用されたのが、CCCマーケティングのデータでした。
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設定したペルソナを軸に、「時短」「おいしさ」といった「博多ニワカそうす」の価値が明確に伝わる内容をしっかり盛り込むとともに、ターゲットが理想とするライフスタイルをビジュアル化するなど情緒に訴えるクリエイティブも随所に配置。データ分析に基づくコンテンツ設計によって、「博多ニワカそうす」が提供する価値を求めるユーザーが、思わず気になって手に取り、「博多ニワカそうす」を使った時に得られるシーンをイメージできる様に制作しました。

このレシピ本は、九州をはじめとする全国の蔦屋書店やTSUTAYAなどで、平台で商品と併売するフェア台展開を実施。さらに一部大型店舗では、併売だけでなく「博多ニワカそうす」の試食会も実施するなど、CCCのアセットを活用した施策を展開し、全国的な認知拡大と販売促進に寄与。そしてその結果、取組前と比べて製品売上が3倍にUPするという大きな成果を実現したのです。

今回の施策の結果を振り返り、友香子氏はこう話しました。

「『博多ニワカそうす』は、使っていただければきっと喜ばれる商品とわかっていながら、その価値はどこにあるのか、また、それをどのように伝えたらいいのか、自分ひとりではわからずに悶々とするばかりでした。でも今回の本で、そんな悩みもクリアになり、お客さまにしっかりと商品価値をお話しできるようになったことは、自分たちにとって大きな前進となりました。とても感謝しています」
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今回、CCCマーケティングのデータ活用によって「博多ニワカそうす」の新たな価値を見出すことができました。最後に良幸氏は、今後の取り組みについて、こう語ります。

「今まで、われわれはリアルな試食会などを通じて、『博多ニワカそうす』ファンをつくってきました。ところが、昨今のコロナの影響で、そのような活動が思うようにできません。そこで今後はもっとECに力を入れ、効率的に全国展開を図っていきたいと考えています。

そのような場面では、CCCマーケティングが保有している膨大なデータと分析力は、大きな力になると思い、次のEC強化の取組についても相談しているところです。これからもCCCマーケティングに協力してもらいしながら、『博多ニワカそうす』をどんどん広めていきたいと思っています」
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