予算0ドルのテスラに学ぶ 市場を席巻するマーケティング戦略

予算0ドルのテスラに学ぶ 市場を席巻するマーケティング戦略

「マーケティングのヒント」は、さまざまな専門家や記者のみなさまの見解をご紹介するコラムです。

Tesla(テスラ)は2003年に設立され、約20年で世界で最も影響力のある自動車メーカーのひとつとなりました。時価総額は118兆円に達しています。

世界有数の企業として確固たるポジションを獲得したテスラですが、意外なことにマーケティングチームは存在しません。テスラのSNS広告予算は「ゼロ」と言われています。

テスラの成功への道を支えてきたのは、独自のマーケティング手法であることは否定しようがありません。私たちもテスラの事例を参考に、巧みなマーケティング戦略を構築できないでしょうか。

目次[非表示]

  1. 1.常識を覆すマーケティングアプローチ
    1. 1.1.企業理念とビジョンの一貫性
    2. 1.2.パブリシティ・スタントの運用
    3. 1.3.社会貢献活動への取り組み
    4. 1.4.アドボカシー・マーケティングの活用
  2. 2.テスラのマーケティング戦略から学ぶ
  3. 3.CCCマーケティングからのお知らせ

常識を覆すマーケティングアプローチ

テスラは、マーケティング戦略に非常にユニークなアプローチを採用しており、自動車業界の中で際立った存在です。マーケティングや広告に業界平均の数分の一しか投資していないことでも知られています。

一方で、製品開発や人目を引くようなプロモーション活動、共同創業者兼CEOイーロン・マスク氏の物議をかもしだす発言などから、有料広告を使わない方法で人々の関心と消費者層を作り出しているのです。

米国トップ自動車メーカーのソーシャルマーケティング・キャンペーンを調査したBrandTotalのレポートによると、テスラは調査対象の30日間に広告費を一切費やしていなかったことが判明しました。

テスラがプロモーションに全く投資していないことを意味するものではありませんが、競合他社が費やした膨大な予算と比較すると、目ざましい成果であると言えます。

企業理念とビジョンの一貫性

テスラのすべての事業は、
「出来るだけ早く大衆市場に高性能な電気自動車を導入することで持続可能な輸送手段の台頭を加速する」
という企業ミッションの実現に寄与しています。

電気自動車や家庭用蓄電池「パワーウォール」など蓄電システムの開発を通じて、ゼロ・エミッション社会への移行をリードしていくことを目指しているのです。

目的志向で意欲的なマーケティングスタイルは、テスラ車を所有しているかどうかに関わらず、ブランドと消費者の感情的な結びつきを促します。

テスラの評判とアイデンティティを高め、わずかな広告活動で市場での地位を維持するのに十分であることが証明されています。

パブリシティ・スタントの運用

テスラは、航空宇宙企業SpaceX社を含むイーロン・マスク氏のさまざまな事業体の実験プロジェクトをPRイベント化し、世界中で多額なアーンドメディア(earned media:フォロワーやインフルエンサーなど口コミで得られるメディア露出)を獲得しています。

一例として、2018年に成功したSpaceX社のロケット試験飛行は、代替広告キャンペーンとして運用されました。

イーロン・マスク氏は、宇宙開発ミッションが世界中の注目を集めると考え、テスラ・ロードスターをロケットに搭載したのです。

打ち上げ4分後に公開され、眼下に消えていく地球を背景に軌道上の新車を紹介するために世界中に生中継されました。

パブリシティ・スタント(publicity stunt:奇抜なイベントなど人目を引く宣伝活動)は、メディアを熱狂させ、テスラ、SpaceX、イーロン・マスクのブランド認知度と評価を急上昇させました。メディアの無料プロモーションを上手く利用したのです。

社会貢献活動への取り組み

テスラは社会的・環境的課題に対応する手段として、慈善事業に取り組んでいます。

2018年にプエルトリコで発生した自然災害「ハリケーン・マリア」では、350万人の市民が電力や水道が使えない状態に陥りました。
この事態に際し、ソーラーパネルに接続してエネルギーを蓄える家庭用バッテリー「パワーウォール」を被災地に提供しています。

多くのフォロワーを持つイーロン・マスクのツイッターは、こうした活動を自由に発表・議論する唯一のコミュニケーションチャネルであり、多くのメディアで取り上げられました。

コミュニティとのつながりを築くことは、どんな企業にとっても成功のカギとなります。ブランドや企業に対する忠誠心と情熱を育むことができるからです。

アドボカシー・マーケティングの活用

テスラはアドボカシー・マーケティング(Advocacy Marketing:顧客の利益を最優先することで信頼を獲得しようとするマーケティング手法)を取り入れ、満足した顧客がブランドのミッションと製品を自分のオーディエンスに共有するよう促しています。

テスラ愛好家のコミュニティは、テスラのビジョンとクリーンエネルギー製品の品質を信頼しているため、ポジティブな口コミを広めているのです。

テスラは、以下の公式紹介プログラムを開始しました。

お客様の紹介コードでご友人が新車のTeslaを購入されると、お客様・ご友人双方が1000マイル相当のスーパーチャージャー無料利用特典を獲得できます。また、それぞれのご紹介につきイーロン・マスクとフランツ・フォン・ホルツハウゼンのサインが入ったファウンダーズ シリーズ Model Yの新車(月に一度) 、Roadster の新車(四半期に一度)があたるチャンスを獲得できます。スーパーチャージャー無制限利用特典を獲得しているTeslaオーナーの方は紹介コード1件につき2エントリーが付与されます。
引用)Teslaの新しいお客様ご紹介プログラム | テスラジャパン
https://www.tesla.com/jp/blog/teslas-new-customer-referral-program

顧客は本プログラムを通じて、スーパーチャージャー無料利用やテスラ車両を獲得するチャンスなど、魅力的な特典を受けられます。

また、プログラムは市場動向に応じて随時更新されています。新しい限定特典を導入することで、顧客の期待を裏切らないプログラムを目指しているのです。
※本プログラムは現在、日本では休止しています。

テスラのマーケティング戦略から学ぶ

テスラのようなベストプラクティスから学ぶことは、独自のマーケティング戦略を構築するための基礎となります。

自社の目標を達成するために、企業のミッションとビジョンを設定し、消費者に頻繁に伝えましょう。テスラのスローガンは顧客の共感を呼び、何度も繰り返し発信されています。

また、テスラは最も効果的なマーケティング手法のひとつである「口コミ」を活用しています。消費者は、企業が運営するチャネルよりも、友人、同僚、家族など、自分が知っていて信頼している人からの「おすすめ」を信用する傾向があります。

まずは、製品、販売プロセス、カスタマー・サービスを最高のものにすることから始めましょう。競合他社に差をつける独自のプロモーション戦略を構築するための一歩となるはずです。

Midori

Midori
総合広告代理店のアカウントエグゼクティブを経て、国際結婚を機にイタリアに移住。取材・撮影コーディネーターのほか、フリーランスライターとしてマーケティングに関する記事を執筆しています。

CCCマーケティングからのお知らせ

テスラでは「口コミ」が活用されていましたが、CCCマーケティングでも「口コミ」をマーケティングに活用するサポートをしています。

オンラインの企画会議のように、WEB上で生活者の本音を聴くことができるプラットフォームや、購買履歴に紐づいて投稿できるクチコミサイトを保有していますので、「口コミ」をマーケティングに活用したい企業のみなさまは、CCCマーケティングへご相談ください。

ご参考に、各プラットフォームを活用し「世代間ギャップを感じたシーンや気持ちを本音で語り合った結果」を読み解いた資料がございます。
無料でダウンロード可能ですので、ぜひご覧ください。

親世代・小世代が感じる世代間ギャップとは?

※CCCマーケティングでは、セキュリティ上厳重に管理された環境のもと、個人を特定できない状態でマーケティング分析を行っております。
※本コラムに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。

参考)トヨタ、車1台の利益でついたテスラとの3倍の差: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD027700S1A101C2000000/?unlock=1

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