なぜ私たちはiPhoneを選ぶのか?ポジショニング戦略の真髄をつく
「マーケティングのヒント」は、さまざまな専門家や記者のみなさまの見解をご紹介するコラムです。
「ビジネスメール実態調査2021」によると、ビジネスパーソンのほぼ100%がPCでメールを利用し、1日平均51.1通を受信しています。
加えてスマートフォンでも、ネットニュースやFacebook、LINE、Twitter、Instagramなどを通じて情報収集をしていることでしょう。
このように、1日に多くの情報を目にする現代の消費者に抽象的で漠然としたメッセージを送って「注意をひきつける」ことは、容易ではありません。
あふれるコミュニケーションの中でお客様の心をつかむことは、ビジネスでは売上に直結する重要な課題です。
そこで取り組みたいのが、「ポジショニング戦略」と呼ばれるマーケティング手法です。
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ポジショニングとは
ポジショニングは英語で「位置づける」という意味です。
マーケティングの世界では、アル・ライズ/ジャック・トラウト著「ポジショニング戦略[新版]」が次のように定義しています。
ビジネスにおけるポジショニングは、商品から始まる。商品とは、製品、サービス、企業、組織、あるいは一人の人間である。あなた自身の場合もある。 といっても、ポジショニングは、商品そのものに手を加えるわけではない。消費者の頭の中に、商品を位置づける(ポジショニング)のだ。名前や価格、パッケージを変えることはあるが、商品そのものには手を加えない。 |
ポジショニング戦略とは、自社の商品を競合他社と比較して優位に位置づけ、消費者にどのように受け止めてもらうかを考える手法です。
消費者に商品のユニークな価値を認めてもらうことで、競合他社に対して優位に立つことを目的にしています。
ただし、自社の商品が他社より優れているかどうかではなく、消費者が自社の商品を魅力的であると認識しているのかを重視することが大切です。
ポジショニング戦略の基本的な手法は、以下のように説明されています。
ポジショニングの基本手法は、「消費者の頭の中に既にあるイメージを操作し、それを商品に結びつける」というものだ。誰の頭にもない新奇なイメージをつくりだすことではない。 |
つまり、ポジショニング戦略とは、「消費者の頭の中で」自社の商品が特別な存在に見える状況を作り出すことなのです。
ポジショニング戦略における3つの成功事例
ポジショニングを適切に活用することで、競合との明確な違いを生み出し、差別化に成功した事例をベネフィット別に紹介します。
NIKE:自己表現ベネフィットの事例
NIKEは、世界のトップアスリートを起用することで、商品をうまく位置づけています。
例えば、マイケル・ジョーダンとスニーカーを結びつけることで、消費者の信頼を獲得し、知名度を向上させたのです。
また、ジョーダンブランドは「誰もが跳べる」というメッセージで消費者の感情に訴え、自分自身の可能性を発見することも促しています。
「この商品を使うと、マイケル・ジョーダンのようにカッコよくなれる」と思わせるのが、自己表現ベネフィットです。
Apple:情緒的ベネフィットの事例
私たちはなぜiPhoneを買い求めるのでしょうか?私たちがiPhoneを購入するのは、iPhoneが私たちを特別な存在に感じさせてくれるからです。
Apple製品を購入することで、私たちは「Think Different」 になります。「Think Different」には、「発想を変えよう」「モノの見方を変えてみよう」という意味が含まれています。
私たちは、Appleが掲げるスピリットのもと、革新的で想像力に富み、創造的な存在になれるのです。
「Apple製品を買ったり使ったりすると、自分がよりクリエイティブな人間になったような気がする」というのが、情緒的ベネフィットになります。
Tesla:機能的ベネフィットの事例
ニッチに特化したポジショニングは、Teslaを抜きにしては語れません。全く新しいニッチを切り開くことで、自動車市場での地位を確立するために独自のアプローチをとっています。
競合他社とは異なり、Teslaは大量生産が可能な比較的手頃な価格の自動車を開発することで市場に参入したわけではありません。
電気自動車市場には存在しないもの、つまり高級で長距離走行が可能な電気自動車を提供することで、独自の市場を作り出すことに注力したのです。
妥協のない電気自動車が必要不可欠であり、そのためにテスラ ロードスターはポルシェやフェラーリなどのガソリン スポーツカーとの直接対決で勝利を収められるようデザインされています。また、それだけでなく、プリウスの倍のエネルギー効率を誇ります。 |
テスラは、他のガソリンエンジン搭載の高級車や標準的な電気自動車と品質で差別化されています。ニッチなだけでなく、機能的な優位性を持ったポジショニングの一例と言えるでしょう。
ポジショニング戦略を構築する方法
ポジショニング戦略を策定するための強力なツールが「ポジショニングマップ」です。
市場における自社と競合他社とのポジショニングを可視化したもので、顧客のKBF(Key Buying Factors:購買決定要因)を意識して縦軸と横軸で図示されます。
自社商品と他社商品との競合関係の把握や、差別化戦略、将来の市場予測をするのに有効です。
また、ポジショニングマップはいつでも変わり得ることに留意する必要があります。
優れた企業は、決して現在のポジションに甘んじることはありません。必要に応じてポジショニングを見直すとよいでしょう。
独自の取り組みにより、中小企業でも大企業に対する競争優位を獲得することができます。
Midori
総合広告代理店のアカウントエグゼクティブを経て、国際結婚を機にイタリアに移住。取材・撮影コーディネーターのほか、フリーランスライターとしてマーケティングに関する記事を執筆しています。
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参考)ビジネスメール実態調査2021 | 一般社団法人日本ビジネスメール協会
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