定性調査と定量調査の違いとは?それぞれの方法や活用事例を解説
マーケティング調査には、大きく分けると「定性調査」と「定量調査」の2つがあります。それぞれの特徴や違いについて、正確にはわからないという人も多いかもしれません。
本記事では、定性調査と定量調査の違いや、それぞれの代表的な手法とメリット・デメリットを解説します。あわせて、定性調査・定量調査それぞれを事業に活用した事例についても見ていきましょう。
目次[非表示]
- 1.定性調査と定量調査の違い
- 1.1.調査する内容が異なる
- 1.2.調査する目的が異なる
- 2.定性調査の手法
- 2.1.グループインタビュー
- 2.2.デプスインタビュー
- 2.3.行動観察調査
- 2.4.訪問調査
- 3.定量調査の手法
- 4.定性調査のメリット
- 5.定性調査のデメリット
- 6.定量調査のメリット
- 7.定量調査のデメリット
- 8.定性調査・定量調査を組み合わせて活用すると良いケース
- 9.CCCMKホールディングスのリサーチ(定性調査・定量調査)サービスの内容と特徴
- 9.1.【定性調査】Blabo!
- 9.2.【定量調査】ID-POS分析
- 9.3.【定量調査】Tリサーチ
- 10.CCCMKホールディングスのリサーチサービスの活用事例
- 11.定性調査と定量調査は、目的に応じてうまく活用しよう
定性調査と定量調査の違い
定性調査とは、少数の人にインタビューなどをして「言葉」で情報を収集する調査を指します。一方、定量調査とは、収集したデータを「数値」で分析する調査のことです。
定性調査と定量調査は、調査する内容と目的で下記のような違いがあります。
調査する内容が異なる
定性調査は、数値化できない感情や価値観などを「言葉」で情報収集する調査のことです。定量調査と違い、選択肢による回答は想定していないため、調査対象者は言語化して回答する必要があります。
モデレーター(司会者)は、インタビュー対象者の回答に応じて臨機応変に追加質問を行い、回答を深掘りします。思いがけない回答を得られることもあるのが定性調査の特徴です。
一方、定量調査は、数値で表せるデータを得る調査のことです。例えば、アンケートで「良い」「悪い」という選択肢を用意すると、「良い」が40%、「悪い」が60%といった数値の結果が得られます。数値で把握すると、全体の傾向が理解できます。しかし、サンプル数が少ないと信頼性が低下するため、注意が必要です。
調査する目的が異なる
定性調査は「改善点の発見」「仮説構築」を目的に、定量調査は「実態把握」や「仮説検証」を目的として行う場合が多いです。
定性調査では、消費者一人ひとりからさまざまな意見の収集や深掘りすることで、商品の改善点などを発見しやすくなります。また、消費者の意見から仮説を構築することも可能です。
一方、定量調査では、アンケートの各選択肢の回答割合から全体の傾向が確認できます。つまり、アンケート結果の数値を分析することで、市場や商品認知度などの実態を広く把握できるのです。さらに、仮説が正しいかをアンケート結果から論理的に検証することもできます。
定性調査の手法
実際にどのような調査が行われるか、調査手法の具体例と特徴を確認していきましょう。定性調査の調査手法としては、下記の4つが代表的です。
グループインタビュー
グループインタビューとは、回答者を6人ほど集めてグループを作り、モデレーターからの質問に対して自由に発言してもらう調査のことです。インタビュー対象を複数人集めると、他人の意見にふれることでさまざまな発言が出やすく、多くの情報を収集できます。
デプスインタビュー
回答者とモデレーターの1対1で行うインタビュー調査が、デプスインタビューです。グループインタビューと違い、1人の回答者に対して臨機応変に質問できるため、潜在ニーズまで深掘りできます。また、金銭関係や病気といったセンシティブな内容にも踏み込んで質問できることがメリットです。
行動観察調査
対象者の行動を観察して情報収集する調査を、行動観察調査といいます。例えば、買い物への同行や自宅訪問によって、商品の購買プロセスや利用状況を観察します。消費者の無意識の行動を分析することで、インタビューでは言語化できない潜在意識を発見することも可能です。
訪問調査
訪問調査は、対象者の自宅を訪問してアンケートを行う調査のことで、行動観察調査の一種です。対象者の生活実態を観察しながら、深掘りしたインタビューを行います。リビングや寝室などの生活領域に入って調査することから、対象者の協力が得られにくい点がデメリットです。
定量調査の手法
定量調査に分類される調査手法としては、下記の5つが代表的です。ウェブで手軽に実施できるものから、一定の人員・時間・場所が必要になるものまで、さまざまな手法があります。
ウェブ調査
ウェブ調査とは、インターネット上でアンケートを実施する調査手法のことです。
アンケートの主催者が質問と回答の選択肢をウェブ上に公開すると、回答者はスマートフォンやタブレットなどで回答できます。集計も簡単にできるため、ウェブ調査の利用は増えています。
会場調査
会場調査は、指定した会場でアンケートを実施する調査のことです。会場では、回答者に商品やサービスを実際に体験してもらい、その評価を聞くアンケートを実施します。
電話調査
電話調査は、回答者に電話で質問し、意見や感想を調査する方法です。質問者は決められた質問項目を順番に聞いて、回答された内容を記録します。会話での調査のためすぐに回答が得られること、具体的な意見や感想を聞けることがメリットです。
郵送調査
回答者にアンケート用紙を郵送し、回答した用紙を返送してもらうのが郵送調査です。ウェブ調査での回答を苦手に感じているような高齢者を含めた幅広い層へのアンケートが実施できる一方で、回答の集計に時間と手間がかかるというデメリットもあります。
ホームユーステスト
ホームユーステストとは、新商品を一定期間、試用や試食をしてもらい、アンケートに回答してもらう調査手法です。一定期間使わないと評価できない化粧品や健康機能食品などの調査で採用されることがほとんどです。商品の評価を確認できるだけでなく、気に入ってもらえれば顧客になることも期待できます。
定性調査のメリット
マーケティング調査を実施する際は、調査手法の特徴を意識して、最適な方法を検討しなければなりません。
インタビューによって言語化された回答を得る定性調査では、下記の2点がメリットとして挙げられます。選択肢を選んでもらうだけの定量調査では得られないような、多くの情報が手に入るでしょう。
回答理由などを深掘りして聞ける
定性調査は、ひとつの回答に対して「どうしてそう思うのか?」などと追加で質問して、回答を深掘りすることが可能です。最初の回答に対して、背景となる価値観や心理状況を聞き出せば、消費者の潜在ニーズやインサイトも把握できる可能性があります。
回答者の反応など、回答者自身が意識していないデータも得られる
インタビューでは、言語化された回答だけでなく、質問などに対する咄嗟の反応などの情報も得ることが可能です。例えば、新商品を見せた際の表情などは、商品開発・改良やマーケティングのための非常に重要な情報となります。
定性調査のデメリット
多様な情報が得られる反面、定性調査では下記の2点に注意しなければなりません。回答者と調査担当者に大きな負担がかかるので、場合によっては実施自体が困難な場合もあります。
回答者の負担が定量調査に比べて大きい
定性調査は、回答者が言語化しなければならないため、選択肢を選んで回答する定量調査に比べて、回答者の負担が大きくなります。生活スタイルなどへの踏み込んだ質問には、気軽に答えにくいこともあるかもしれません。
また、オンラインでインタビューを実施するケースもありますが、会場や自宅で実施する場合には調査協力のハードルはより高くなります。
調査担当者のスキルによって得られる結果が変わる
モデレーターのインタビュースキルによって、回答者から引き出せる情報量や質が左右される点もデメリットです。モデレーターには、聞き取りたい情報をうまく引き出すことができ、かつ回答者にとっても答えやすい質問の仕方を考えるスキルが求められます。
定量調査のメリット
選択肢の中から回答を選んでもらう定量調査の主なメリットには、下記の3点があります。手軽に客観的なデータを得られやすいという点が特徴的です。
回答者の負担が定性調査に比べて小さい
定量調査は選択肢の中から選ぶ形になるため短時間で回答でき、回答者の負担が少ないことがメリットです。特にウェブ調査では、手軽にスマートフォンやタブレットなどで回答できます。
データの集計がしやすい
「言葉」のデータを集める定性調査と違い、「数値」を集める定量調査は、集計しやすいのが特徴です。各選択肢の回答数を数えるだけなので、言葉の形で得られた回答を一つひとつ確認していく定性調査に比べ、集計に比較的時間がかかりません。
数値で結果が出るので誰に対しても説得力のあるデータが得られる
定量調査では、集計したデータを表やグラフにすることで、全体の傾向を「見える化」できます。これにより、誰に対しても説得力のあるデータを示せます。統計的な分析も加えれば、より確実性の高い仮説検証・実態把握ができるでしょう。
定量調査のデメリット
定量調査の活用を検討する際には、デメリットも意識しなければなりません。マーケティング調査を実施するときは、下記の2点を念頭に置いて、定量調査の活用が最適なのか検討する必要があります。
データを分析するスキルが必要になる
アンケートで集計したデータは、分析するスキルがなければ、適切に活用できません。集まった数値データそのものだけではどのようにマーケティング戦略に活かせるかはわからないため、データを活用するための効果的な分析が必要です。前年との比較や、2つ以上の質問項目の回答傾向を掛け合わせて分析するクロス集計などを活用し、施策に活かせる分析結果を導き出す必要があります。
アンケートの内容以上の深掘りした回答は得られない
定量調査では、あらかじめ決められた選択肢から回答を選ぶ形式がほとんどです。そのため調査者は、事前に用意した選択肢以外の回答を得ることはできず、回答の背景などを深掘りするような調査は難しいです。
定性調査・定量調査を組み合わせて活用すると良いケース
定性調査と定量調査は、二者択一でどちらかだけを選ばなければならないというものではありません。両者を組み合わせ、課題にアプローチするという方法もあります。
例えば、「仮説構築」のために定性調査を使い、その「検証」に定量調査を使うという方法です。明確な仮説を立てられないまま定量調査を行うと、調査の方向性が曖昧になって、施策に活用できる有効なデータを得られないことがあります。そこで、定性調査を実施し、得られた意見から仮説を立て、その仮説が正しいかがわかる質問・選択肢を設定した定量調査を実施すれば、商品開発などに活用できるデータの入手が可能です。
ほかには、定量調査でどのような商品に人気が出るかといった全体の傾向を把握して、定性調査でその背景を探るという方法が考えられます。傾向を把握したうえで深掘りできるため、より確実性を高めて定性調査を実行できます。
CCCMKホールディングスのリサーチ(定性調査・定量調査)サービスの内容と特徴
【定性調査】Blabo!
Blabo!とは、「生活者の本音」からインサイトを導き出すことで定性的な調査が可能な、コミュニケーションプラットフォームです。
企業が知りたい内容を、生活者が回答しやすい「お題」として掲載し、ウェブサイトやアプリを通じて生活者の声を集めることができます。企業と生活者が双方向でコミュニケーションを取ることができるため、生活者とのコメントのやりとりの中で本音を引き出すことができます。
Blabo!ではお題を通じた生活者とのオープンなコミュニケーションの中でインサイトを探ることができることが特徴です。
【定量調査】ID-POS分析
CCCMKホールディングスが保有している膨大な購買データをさまざまな切り口で詳細に分析できる定量調査サービスです。市場の変化の兆しを掴みたい、マーケット全体の情報を定量的に理解したうえで新たな仮説を得たいと考えている時に役立ちます。
【定量調査】Tリサーチ
Tカードの購買・行動データをもとにセグメントした方に対し、直接ウェブアンケートをオファーできる定量調査サービスです。実購買データによるセグメントを行うことができるため、ブランドスイッチをした人に対して、そのきっかけや理由を聞いたり、実購買点数をもとにヘビー層・ライト層に分類しアンケートを行い、それぞれの意見の違いを明らかにしたりする調査を行うことができます。
回答者はアンケートパネルではなく、T会員であるため、より一般の生活者に近いリサーチ結果を得ることができることが特徴です。
CCCMKホールディングスのリサーチサービスの活用事例
定性調査事例:ミールキットメーカーの商品開発
料理初心者の男性向けの新商品開発を行うため、男性が料理をする際にハードルとなる部分がどこなのか、顕在化していない課題を明らかにするため、『料理にまつわる「カップル/夫婦あるある」を募集します!そんな夫婦あるあるを解消するお料理キットって?』というお題でアイデアを募集しました。
「どんな商品がよいと思いますか?」という直接的な質問ではなく、それよりも実際の体験をもとにした「自分ゴト」視点のアイデアを集めることができました。
結果として、作りやすさだけではなく「片付け」が重要ということが分かり、2品20分の時短メニュー+片付けのポイントをまとめた冊子をセットにした商品が開発されました。簡単でおいしい料理ができるだけではなく、後片付けのポイントも身につくので、1回で終わらず、今後の料理の習慣化にもつながります。
このように、Blabo!を活用すれば、従来のアンケート調査からは出てこない「自分ゴト」視点のアイデアから、商品開発やコミュニケーション設計が可能です。
定量調査事例:機能性炭酸飲料のコミュニケーション戦略見直し
ある機能性炭酸飲料のプロモーションの見直しを行う際に、ID-POS分析で優良顧客の分析を行いました。飲料メーカーさまは調査前まで「健康志向」の方をアプローチ対象として想定していましたが、実際に購買者について分析を行ったところ、カップラーメンや唐揚げ弁当などの商品を併買しており、運動頻度が低く飲酒頻度は高い「なんちゃって健康志向」の方が多い可能性が見えてきました。
ID‐POS分析を行ったことで想定顧客と実際の購買者のズレが明らかになり、プロモーション戦略の見直しにつながった事例です。
定性調査と定量調査は、目的に応じてうまく活用しよう
定性調査と定量調査は、目的に応じて選択することが重要です。また、両者を組み合わせることで必要な情報を得るという方法もあることも、念頭に置いておきましょう。
もっとも、これまでマーケティング調査を実施したことがなかったり、調査で得られた情報をうまく活用できていなかったりする場合には、調査手法の選択や実施に不安に思う担当者も多いかもしれません。
そのような場合は、CCCMKホールディングスにお気軽にお問い合わせください。CCCMKホールディングスでは、企業の課題を解決する定量調査・定性調査の実施を支援する、さまざまなサービスを行っています。
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