おはぎは売れても「おはぎの作り方」は売れない 一体なぜ?
「マーケティングのヒント」は、さまざまな専門家や記者のみなさまの見解をご紹介するコラムです。
少し前に、Twitterでつぶやいたのですが、お客さまが実際に手に取ってみることができる「有形商材」と、実体のない「無形商材」では、売り方に大きな違いがあります。
「おはぎのレシピ」は無形商材であり、実体がありません。レシピを掲載した媒体(本やウェブサイトなど)はありますが、情報そのものには実体がないからです。
一方で「おはぎ」は、有形です。
あんこで包まれたもち米という実体があり、香りなども存在しています。
そして、どちらが売れるかといえば、当たり前ですが「おはぎ」のほうが圧倒的に売れます。
手に取れるものを評価するのは簡単であり、情報よりも「すぐに食べられるもの」のほうが、実用的だからです。
よって、「やり方を教える」という、無形の商材よりも、「おはぎを作って売る」という有形の商材のほうが売れやすいでしょう。
しかし、実体がないということは、元手がかからない、ということでもあります。
それゆえに、無形商材は利益率が高く、うまく売ることができれば、大きな利益を期待できます。
では、無形商材をうまく売るにはどうしたらよいのでしょうか。
目次[非表示]
- 1.形が見えるようにする
- 2.小さく切り出す
- 3.売る人が信用される
- 4.実績の強調
- 5.豊富な情報
- 6.まとめ
- 7.CCCマーケティングからのお知らせ
形が見えるようにする
私は「プロジェクトマネジメント」という分野のコンサルティングを行っていたことがあります。
お客さまはシステム開発業が中心でした。
当時、システム開発プロジェクトが大きな赤字を出してしまったというケースが頻発し、会社が傾いてしまうケースも少なくなかったためです。
ところが、残念ながら、「コンサルティング」への需要はほとんどありませんでした。
既存のお客さまをまわって、「プロジェクト管理はとても課題だ」という企業にすら、売れなかったのです。
いつも言われるのは、「必要なんだけどね…何してくれるの?」という言葉。
「こういったアドバイスをします」という説明をするのですが、実感がわかないようなのです。
そこで我々は、今までの経験をもとに、プロジェクト管理の様式などを作り、研修の形にして、先方に提案したところ、「うちで研修をやってほしい」ということになったのです。
「形のあるもの」は人を納得させやすい。
これは、消費者相手の商売でも全く同様です。
「つやつやになる髪の洗い方を教えます」というアドバイスを売るよりも
「髪がつやつやになるシャンプー」を売るほうがはるかに簡単です。
「無料で資産形成のアドバイスをします」よりも
「資産形成ノウハウ本プレゼント」のほうが人を呼べます。
「子供の運動神経を高める方法を教えます」よりも
「なわとび」や「ボール」のほうが売れます。
したがって、無形商材を、売れるように改良の検討をするときに、まず考えるべきことは、「有形化する」ことなのです。
小さく切り出す
実は、無形の商材・サービスを「売りやすくする」方法はほかにもあります。
その一つが「小さく切り出す」ことです。
小さく切り出すことで、顧客は小さなコストでサービスを「試す」ことができるからです。
例えば各種アプリ。
アプリが提供する便益は無形であり、その多くは使ってみるまで分かりません。
しかし、機能の一部を制限し、小さく切り出すことで、ユーザーはアプリの使い勝手を「試す」ことができ、有料のサブスクリプションの契約を促進することができます。
あるいは習い事における「体験入学」。
料理教室やスポーツクラブなどが提供する便益は、無形で手に取ることができません。
したがって、サービスを小さく切り出して「試す」ことを顧客に提供し、契約の獲得を促進することができます。
小さく切り出したサービスを積極的に提供し、「試してみてよかったら購入してください」というのは、サービスを売るうえで、古典的ではありますが、「有形化」と同様に、効果的なやり方です。
売る人が信用される
無形の商材を売りやすくする工夫は、まだあります。
例えば生命保険のケースです。
生命保険は、基本的には無形で便益がわかりにくく、その価値を顧客が実感するのが難しいため、売るのが非常に難しい商材です。また、「有形化」や「お試し」も商品の特性上、非常に難しいと言えます。
では、生命保険はどのように売れば良いのでしょう。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、生命保険に入るきっかけは、圧倒的に「人のすすめ」であることがわかります。
出典)https://www.jili.or.jp/research/report/1297.html
出典)生命保険文化センター
https://www.jili.or.jp/research/report/1297.html
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/30/p075-115.pdf p.115
「親身になって説明してくれた」
「営業職員にすすめられた」
「営業職員と知り合いだった」
「家族などに勧められた」
という回答で全体の7割近くを占めています。
同様のケースは、私が過去に在籍していたコンサルティング会社においても見られました。
私の上司は「コンサルティングを売るな。自分を売れ」と新人たちに指示していました。
実際、コンサルティングは、アドバイスの中身より、「この人に来てほしい」という理由で契約を結ぶことも多かったのです。
「熱心に通ってくれるから」
「頑張ってくれているから」
「親身になってくれたから」
こうした理由で、中小企業の経営者や、企業の担当者がコンサルティング契約を結んでくれることは少なからずありました。
実績の強調
無形商材を売りやすくする方法の一つに、「実績」を強調することがあります。
「あの人も使っています」と著名人を引き合いに出すこともありますし、「〇万人が利用しています」「1日に〇万個売れます」といった、数値に訴えるケースもあります。
「実績は、売れたからこそ、協調できるのでは」と思う方もいるかもしれません。
しかし、実績を作る方法はいくらでもあります。
例えば、知人に無料で利用してもらい、その代わりに販促資料に掲載させてもらう、といったケースや、モニターを募集して、そのコメントを収集するというケースもあります。
豊富な情報
無形商材は、手に取ってみることができません。
十分な情報が入手できなければ、、その時点で購買の対象から外れてしまいます。
したがって、無形商材の販売には、有形商材よりも、わかりやすい商品説明をはじめとした、豊富な情報提供が必須となります。
逆に言えば、「豊富な情報」が、購買意欲を高め、決定を促すのです。
例えば、以下のような情報です。
・どんな商品・サービスか?
・価格は?
・アフターサポートは?
また、不信感を払しょくするため、売り手に関する情報を積極的に提示することも重要です。
・どんな会社が提供しているか?
・どのような理念に基づく商売なのか?
・実績はあるか?
あるいは、「利用手続き」なども、お客さまへ提供することで、購入へのハードルを下げることができます。
・どうやって申し込めばよいのか?
・解約はできるか?
・決済方法は?
しかし、何より肝心なのは、「今すぐお客さまにならない人たち」、つまり見込み客にも、継続的に情報を提供することです。
そして、見込み顧客へは、サービススペックや売り手の話をする前に、「利用した時のシーンを想像してもらう」ことが重要です。
・使ってみたら、自社ではどうなるのか?
・生活は変わるか?
・考え方はどう変化するか?
まとめ
無形商材は、有形商材に比べ、販売のハードルが高いものです。
しかし、以下の5つに代表されるように、販売に工夫を凝らすことで、利益率の高い商売が可能になります。
・形が見えるようにする
・小さく切り出す
・売る人が信用される
・実績の強調
・豊富な情報
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者(http://tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
CCCマーケティングからのお知らせ
CCCマーケティングでは、T会員約7,000万人の購買・行動データを掛け合わせた精緻なターゲティングが可能ですが、データもある種「無形」であり、「現場での活用イメージが持てない」「どのようなデータが活用できるのかわからない」などのお声も頂いておりました。
そこで、手元で自由に属性や興味関心を掛け合わせ、顧客規模が可視化できるツールとして、データを形にした「セグメントパネル」を公開しました。
無料でダウンロードいただけますので、ぜひお手元でお試しください!
※CCCマーケティングでは、セキュリティ上厳重に管理された環境のもと、個人を特定できない状態でマーケティング分析を行っております。
本記事を引用・転載をご希望の方は、事前にお問い合わせよりご連絡ください。