購買意思決定プロセスの変遷 注目のニューロマーケティングとは?
「マーケティングのヒント」は、さまざまな専門家や記者のみなさまの見解をご紹介するコラムです。
消費者は何を考え、購入を決めているのか?
マーケティングの担当者であれば、誰でも興味を持つことではないでしょうか。
消費者が商品やサービスを認知し購入を決めるまでの一連の流れをモデル化したものは、「購買意思決定プロセス」と呼ばれています。
認知から購入を決めるまでの間には、いくつかのステップが存在します。
売上を伸ばすためには、それぞれのステップについてよく検証したうえで最適なマーケティング施策を行う必要があります。
どんなマーケティング施策が必要なのかを考えるうえで、消費者の思考プロセスを知ることは欠かせません。
消費者はどのようなプロセスを経て、購入を決めているのでしょうか。
目次[非表示]
- 1.時代と共に消費者の行動モデルはどう変わったのか?
- 1.1.AIDMAとは?
- 1.2.AISASとは?
- 1.3.AISCEASとは?
- 2.消費者の立場で発想することの必要性
- 3.脳の中のプロセスを見えるようにする取り組み
- 3.1.ニューロマーケティングとその実例
- 4.CCCマーケティングからのお知らせ
時代と共に消費者の行動モデルはどう変わったのか?
AIDMAとは?
昔から使われている購買意思決定プロセスのモデルが、「AIDMA」です。
どんなものなのかは、新聞の折り込み広告をイメージすると分かりやすいでしょう。
まず、折り込み広告によって消費者に認知(Attention)されます。
次に、消費者は商品・サービスに興味(Interest)を持ち、欲しい(Desire)と感じます。
さらに、欲しいと感じた商品・サービスを記憶(Memory)し、購入するという行動(Action)を取るという流れです。
AIDMAとは、この頭文字を取ったものです。
このように、認知されてから購入に至るまでの間には、いくつかのステップが存在します。
売れるようにするためには、それぞれのステップに合わせた施策が必要になってきます。
AIDMAモデルは非常によくできたモデルで現在でもよく使われていますが、インターネットの登場によって合わない部分が出てきました。
そこで登場したのが、「AISAS」です。
AISASとは?
AISASでは、AIDMAの欲しい(Desire)と記憶(Memory)の部分が検索(Search)に置き換わっています。
インターネットの世界では、消費者は商品やサービスに興味を持つと、検索によってその商品やサービスの口コミや詳しい情報を知ろうとします。
さらに、購入してそこで終わるのではなく、ユーザーとして商品やサービスのレビューを投稿し、SNSでシェアするという情報共有(Share)が追加されています。
AISASをさらに精密化したモデルとしては、「AISCEAS」があります。
AISCEASとは?
AISASの中では検索という形で一つにまとめられていたステップも、細かく見ると検索した後に競合商品との比較(Comparison)をしたり、検討(Examination)をしたりといったステップがあります。
これらのモデルを図で整理すると、以下のようになります。
ここでご紹介したのは一例であり、時代の流れによる消費者行動の変化や途中のプロセスをどれだけ細かく見ていくのかによって、さまざまな購買意思決定プロセスが考えられます。
マーケティング施策を考えるうえで、どのようなモデルを採用するのかは重要になってきます。
消費者の立場で発想することの必要性
先ほど紹介したモデルは、いずれも売り手の視点に立ったものです。
それに対して近年登場したのが、「DECAX」という消費者の視点に立ったモデルです。
DECAXでは、消費者がコンテンツを発見(Discover)するところからスタートします。
次に、消費者はコンテンツを通してコンテンツの提供者との間で関係構築(Engage)をしていき、見込み顧客の状態になります。
さらに、信頼関係が深まっていったところで商品やサービスについて確認(Check)を行い、ニーズを満たすものであると分かれば購入を決める(Action)という流れです。
購入後には、商品・サービスを体験し、その体験を他のユーザーと共有(eXperience)します。
このような消費者視点のモデルが登場した背景には、情報の氾濫や価値観の多様化があると考えられます。
今や多くの企業がネットを通して情報発信しており、消費者に情報を届けようとしても、すぐに埋もれてしまいます。
また、商品・サービスにうまくマッチしない人が購入してしまうと、後でクレームにつながりかねません。
一方、消費者の側から検索によって見つけてもらえれば、埋もれてしまわずに済みます。
さらに、消費者との間で信頼関係を築き、よく確認してから売ることで、後でクレームになってしまうのを防ぐこともできます。
DECAXを活用した事例が、オウンドメディアの運用です。
企業は、オウンドメディアを通して自社の商品やサービスに関連した、消費者に役立つ情報をコンテンツとして発信し、これを消費者に検索で見つけてもらいます。
コンテンツに満足した消費者は、メディアの運営者との間で信頼関係を深めていき、見込み客になります。
この段階ではニーズはまだ潜在的なものであり、消費者はすぐに商品やサービスが必要だというわけではありません。
やがて商品やサービスに対するニーズが顕在化した段階で、見込み客から顧客に変わります。
このように、売り手の立場で考えるのか、消費者の立場で考えるのかによっても、売り方に違いが出てきます。
脳の中のプロセスを見えるようにする取り組み
買うかどうかを決める際に、人間は合理的に考えて決断を下している。
今までそれが、当たり前だと思われてきました。
しかし、最近の研究では、必ずしも合理的に判断できているわけではないということが明らかになってきました。
人間の意思決定には、直感的で素早く判断を下すシステム1と、理性的で判断の速度の遅いシステム2が関与しているとされています。
意識的に考えるという動作が必要なシステム2は、判断に時間がかかり脳への負担も大きいものです。
そのため、日常生活の判断においてメインに使われるのは、システム1の方です。
米国のスーパーの買い物客の行動データを集めた調査によると、買い物客のほとんどは、文字ではなく色や形、画像、映像に反応し、選び、買うということがわかりました。
つまり、大半の人は、色や形で直感を働かせて買っているのです。
直感的に買っているということは、思考のプロセスがブラックボックス化されてしまいます。
なぜその商品やサービスを選んだのかをアンケート調査しても、「なんとなく」や、後付けの理由になってしまいやすくなります。
そこで注目されているのが、「ニューロマーケティング」と呼ばれるものです。
ニューロマーケティングとその実例
fMRI(機能的磁気共鳴画像法)といった測定手段を用い、脳の血流を計測することで、消費者の反応を客観的に把握することができるとされています。
実例としてコカ・コーラとペプシ・コーラを使った選好に関する実験結果では、ブランド名を伏せた条件では被験者のコーラに対する嗜好の影響がみられただけで、両者に差はありませんでした。
しかし、コカ・コーラの絵を見せた後には、海馬や背外側前頭前野などが有意に活動し、ペプシ・コーラの絵では強い反応は見られませんでした。
このことは、味覚以外にもブランドを想起することによるイメージ評価のシステムが存在し、広告によるブランドイメージの操作によって消費者の欲求システムに強く影響することが示唆されています。
ニューロマーケティングの研究がさらに進めば、消費者が無意識的に何をどう考えて決定を下しているのかというのがわかるようになり、より精度の高い購買意思決定プロセスのモデルができあがるのではないかと期待されます。
黒田貴晴
キャリア系マーケター、心理カウンセラー
脳科学や心理学に強いマーケターとして、主にキャリアに関する分野で活動しているほか、心理カウンセラーとしても、コミュニケーションに問題を抱えた方へのサポートも行っています。就職・転職系のメディアやビジネス心理学のメディアでの執筆実績多数。
CCCマーケティングからのお知らせ
最新の研究から、人間は必ずしも合理的に購買を判断できているわけではないということが分かりました。
T会員の購買データとWEB調査(Tリサーチ)を用いて行った、購入記憶率に関する調査からは、約4割もの購入者が、自身が1か月以内に購入した商品のブランド名を覚えていないということが分かりました。
合理的に判断していないことが要因の一つとなっている可能性もあるかもしれませんね。
購入記憶率とそれに影響する要素を分析した調査結果を無料で公開しておりますので、下記よりダウンロードしてみてくださいね!
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