消費者インサイトとは?意味や見つけ方、ニーズとの違いや活用事例
商品開発やマーケティング担当者は、自社商品の機能や価格・デザインなどについて、常に消費者ニーズを意識しているという方が増えてきています。もちろん、消費者ニーズは重要ですが、近年は「消費者インサイト」を探って、他社と差別化することが重要視されています。しかし、消費者インサイトとは何か、よくわからないという方も多いかもしれません。
本記事では、消費者インサイトについて、消費者ニーズとの違いや見つけ方のほか、重要視される理由について解説します。あわせて、消費者インサイトの活用事例も紹介します。
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消費者インサイトとは、消費者自身も気づいていない本音や動機
消費者インサイトとは、消費者が自分でも気づいていない本音や動機のことです。インサイト(insight)の本来の意味は「洞察」ですが、マーケティング用語では、購買行動につながる「無意識の感情・心理」のことをいいます。
消費者が商品を購買するときには、明確な理由がなく「なんとなく」といった意識で購買しているケースも意外と多いものです。その消費者の「なんとなく」を探ることで、より効果的なマーケティングができると考えられています。
従来、消費者が商品を選ぶときには、企業が広告などで発信する機能や品質などの情報がきっかけになることがほとんどでした。しかし、近年は、SNSやクチコミサイトでの消費者同士の情報交換が活発になり、機能や品質に加えその商品が消費者自身にとってどのような体験・価値を生み出すかが重視されるようになっています。
消費者がどのような体験・価値を望むかという、心の奥にある価値観、つまり消費者インサイトを知らなければ、消費者に満足してもらえる商品を開発・販売することはできなくなってきています。
消費者インサイトの重要性を認識させた出来事
消費者インサイトの重要性が認識されるきっかけとなったのが、「カリフォルニア牛乳協会」のキャンペーンです。
1990年代のアメリカでは、以前に比べて牛乳の消費量が少なくなってしまいました。そこで、カリフォルニア牛乳協会は、牛乳を飲まなくなった消費者からその原因をアンケートで聞き出し、その原因に応じて訴求内容を工夫した広告を実施しましたが、思うような効果は出ませんでした。
発想を変えて、牛乳を飲んでいる人が日常でよく牛乳を飲むシーンを調べたところ、クッキーを食べるシーンだということが判明しました。
さらに、消費者に1週間、牛乳を飲むのを我慢してもらうという調査を行ったところ、「クッキーを食べたときに牛乳を飲めず、最悪な気分になった」という意見が出てきました。つまり、クッキーとともに牛乳が欲しくなるという消費者インサイトを見つけたということです。
そこで、「got milk?(ミルクある?)」というプロモーションで、クッキーのような、食べると口の水分が奪われる食べ物と牛乳の相性がいいことを訴求しました。すると、全米で牛乳の消費量は急増して大成功を収め、このキャンペーンは2014年まで続きました。
この事例をきっかけに、マーケティング戦略で消費者自身も認識していない本音・動機を探ることの重要性が、今では広く知られるようになっています。
消費者インサイトと消費者ニーズとの違い
消費者インサイトと似た言葉として「消費者ニーズ」があります。さらに「消費者ニーズ」は「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」に分けて考えることができます。
それぞれの意味や消費者インサイトとの違いは、下記のように説明できます。三者を比較することで、消費者インサイトの特徴を明確にしておきましょう。
言語化できる消費者の「顕在ニーズ」
顕在ニーズとは、消費者が自分で気づいていて言語化できる欲求や悩みのことです。
例えば、空腹時に「醤油ラーメンが食べたい」と思った人がいたとします。ラーメンと一口にいってもさまざまなものがありますが、「あっさりとした味のラーメンが食べたい」「持ち合わせが少ないので、一番安くて味も悪くないあの店の醤油ラーメンを食べよう」などと考えて醤油ラーメンを選んだ場合は、消費者自身が欲求や悩みを自覚して、言語化できています。
このように、欲しい理由が言語化できているものを、顕在ニーズといいます。
言語化されていない漠然とした消費者の「潜在ニーズ」
潜在ニーズとは、顕在ニーズのようにはっきりと言語化されていない、漠然とした消費者の欲求のことです。例えば「ラーメンが好きではない」という人の中には、その原因がすぐに浮かばない人もいます。「どうして?」と理由を聞かれて初めて、「服にスープが飛ぶことがあるのが嫌だ(スープが飛ばないラーメンがあれば食べてみたい)」といった本音に気づくこともあるでしょう。
つまり、潜在ニーズとは、質問などで気づけば言語化できるものの、消費者自身は明確には自覚していない欲求といえます。
潜在ニーズは消費者が言語化していない欲求であるため、企業がそれを把握するためには、行動観察調査やグループインタビュー、消費者と1対1で行うデプスインタビューなどの方法で言語化を試みることが効果的です。
顕在ニーズ・潜在ニーズと消費者インサイトの相違点
顕在ニーズは言語化できる欲求、潜在ニーズははっきりと言語化されていないけれど指摘されれば気づける欲求のこと。これらに対して消費者インサイトは、欲求があることにすら気づいていない、消費者の本音を指します。
本記事の読者の中には、お店やウェブサイトで新商品・サービスを見て初めて「これは良さそうだ」と気づいた経験がある人は多いのではないでしょうか。その新商品・サービスを見る前にはまったく意識しておらず、商品・サービスの形で見せられてようやく意識できるような、「なんとなく、このような特徴を好む」という傾向があるだけで、それを本人が自覚できていないものが消費者インサイトです。
顕在ニーズや潜在ニーズは「このような商品が欲しい」と言語化できるものであるのに対し、消費者インサイトは、指摘や質問をされても欲しい商品像を明確に描くことができないものなのです。
消費者インサイトが重要な理由
消費者の従来の商品選びでは、価格や機能が重要視されていました。そのため、ニーズのある価格帯・機能を分析して、他社と差別化した商品を開発・販売すれば成果が出ることがほとんどでした。
しかし、近年は、価格や機能面でのニーズを満たした商品は市場にあふれ、消費者の細かいこだわりや好みを満たす商品が求められています。
そのため、消費者自身がまだ気づいていない「こんな商品が欲しかった」という欲求を探り、新たな需要を見つけることが重要になっています。消費者インサイトを見つけて商品の開発やキャンペーンに活かすことで、売上向上が期待できます。
消費者インサイトを見つける方法
消費者インサイトは消費者自身が気づいていない感情のため、消費者に質問しても簡単には見つけられない可能性が高いです。では、消費者インサイトはどのように見つけたら良いのでしょうか。
代表的なものとしては、下記の4つの調査方法が考えられますが、いずれも消費者の本音そのものが聞けるとは限らないため、調査後の分析や推測が重要です。
ソーシャルリスニング
SNSやクチコミサイト、ブログなどのソーシャルメディアから消費者の本音を探る方法がソーシャルリスニングです。特に、匿名で投稿できるTwitterやクチコミサイトには、消費者の本音があふれています。
投稿されたものは言語化された顕在ニーズがほとんどですが、そこから深掘りして分析すれば、消費者インサイトを探ることが可能です。
インタビュー調査
インタビュー調査は、消費者に商品の評価や価値観について質問して、質問に対する回答からさらに再質問をしていき、消費者の心理を深掘りしていく方法です。疑問に思ったことをその場で消費者に質問できるため、消費者インサイトをより深く調査できる方法と考えられています。
インタビュー調査には、4~6名程のグループを作ってモデレーター(司会者)がインタビューをする「グループインタビュー」と、1対1でインタビューする「デプスインタビュー」の2種類があります。
グループインタビューでは、回答者同士が意見交換をすることで、予想外な消費者インサイトを発見できる可能性があります。一方、デプスインタビューでは、ほかに人がいる場では聞けないようなセンシティブな質問ができたり、より本音を引き出せたりする可能性があるでしょう。
行動観察調査
行動観察調査とは、消費者の日常生活や行動を観察して、「どうしてその行動をしたのか」を分析することで消費者インサイトを探る方法です。
店舗への買いものに同行して行動を観察する方法や、消費者の自宅に訪問して日常生活を観察する方法があります。消費者が無意識に行う行動を観察するため、思いがけない消費者インサイトを発見しやすい調査方法です。
MROC
MROC(Marketing Research Online Community)は、消費者専用のオンラインコミュニティ内で1~2ヵ月程度、消費者同士に交流してもらい、そこで生まれたコミュニケーションの内容から消費者インサイトを調査する方法です。
グループインタビューと同様で、消費者同士の会話から、思いもよらない消費者インサイトを発見できる可能性があります。
CCCMKホールディングスが提供する、消費者インサイトの把握ができるサービス
CCCMKホールディングスでは、下記の2つのサービスを活用し消費者インサイトの深堀を行うことができます。調査の目的に応じ、最適な手法でのご提案をいたします。
Blabo!
Blabo!とは、「生活者の本音」からインサイトを導き出すためのコミュニケーションプラットフォームです。
企業が知りたい内容を、生活者が回答しやすい「お題」として掲載し、ウェブサイトやアプリを通じて生活者の声を集めることができます。企業と生活者が双方向でコミュニケーションを取ることができるため、生活者とのコメントのやりとりの中で本音を引き出すことができます。
Blabo!ではお題を通じた生活者とのオープンなコミュニケーションの中でインサイトを探ることができることが特徴です。
■Blabo!のイメージ
Tリサーチ
Tカードの購買・行動データをもとにセグメントした方に対し、直接ウェブアンケートをオファーできるサービスです。実購買データによるセグメントを行うことができるため、ブランドスイッチをした人に対して、そのきっかけや理由を聞いたり、実購買点数をもとにヘビー層・ライト層に分類しアンケートを行い、それぞれの意見の違いを明らかにするなどの調査を行うことができます。
回答者はアンケートパネルではなく、T会員であるため、より一般の生活者に近いリサーチ結果を得ることができることが特徴です。
■Tリサーチのイメージ
CCCMKホールディングスが支援した、消費者インサイトの把握・活用に成功した事例
事例①Blabo!により、シチュー市場の消費者インサイトを探り新商品を開発
ある食品メーカーさまは、カレーに比べてなかなかシチューの売上が上がらないというお悩みを抱えていました。そこで、売上低下の背景にある理由は何かを明確にするために、Blabo!で、「シチューにまつわるモヤモヤ」をお題として生活者の声を募集しました。すると、「シチューがご飯に合わない」事に関する声が多数寄せられ、「おかずとして物足りない」や「もう一品作らないといけない」といったモヤモヤが明らかになりました。その他にも、実はシチュー好きの中には、ご飯にかけて食べる「かける派」がいることも判明しました。その結果を受け、食品メーカーさまは「かける派」に焦点を当て、一品でも満足のいく新たなシチュー商品を開発しました。
本施策は、Blabo!では既存製品のモヤモヤをテーマに生活者の声を募集、市場の課題を探り、商品開発のヒントを得ることができた事例です。
消費者インサイトの発見には、ソーシャルリスニングなどを活用しよう
消費者インサイトは消費者自身も気づいていない感情のため、顕在ニーズ・潜在ニーズに比べて調査・分析するのが難しいといわれています。とはいえ、他社と差別化し、競争力のある商品を開発したり、効果的なプロモーションを行ったりするには、消費者インサイトの発見は欠かせません。
ご紹介したソーシャルリスニングサービスのBlabo!について、詳しくは下記資料をご覧くださいませ。
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